支配の代償。
2008年 02月 24日
●ドリス・レッシング『草は歌っている』(晶文社)
※南ローデシアの農村を舞台とした小説。プア・ホワイトたる植民者の荒廃した生活が、とってもリアルでこわい。黒人に対する圧倒的な差別意識とその裏返しの恐怖は、主人公たちの人生に切り離しがたく溶けこんでいる。植民者たる白人にとって、まさしく「支配の代償」(木畑洋一)なんだろうな。
主人公のメアリが、黒人労働者の賃金を差し引く場面でのセリフなんか、今でもどこかで形を変えて使われていたりして。
※南ローデシアの農村を舞台とした小説。プア・ホワイトたる植民者の荒廃した生活が、とってもリアルでこわい。黒人に対する圧倒的な差別意識とその裏返しの恐怖は、主人公たちの人生に切り離しがたく溶けこんでいる。植民者たる白人にとって、まさしく「支配の代償」(木畑洋一)なんだろうな。
主人公のメアリが、黒人労働者の賃金を差し引く場面でのセリフなんか、今でもどこかで形を変えて使われていたりして。
メアリは-責任者をとおさずに-彼らにじかに、冷ややかなはっきりした口調で話しかけ、みんながどういうふうに間違っているか、現に彼女が行っていることがどれほど正しいかを、見事な理屈で説明した。終りに彼女は、労働の尊厳について、それはすべての南アフリカ白人の骨のずいまで滲み込んでいる教訓であったが、簡単にお説教をした。監督されなくても仕事を愛して働き、言われた通りのことを行ない、支払われる金のことは考えずに、仕事のために仕事する、そんなふうになってはじめて善良な人間と言えるのだ、と彼女は話した。(彼女はアフリカ英語で話したが、部落から出て来たばかりで彼女の言うことが理解できないものもいた)。白人が現在の地位を築いたのは仕事に対するこのような態度のおかげであり、白人は、働くことが善であるがゆえに働き、報酬なしの労働が人間の価値を証明するがゆえに働くのだと彼女は述べた。(p.119)
by sarutasensei
| 2008-02-24 01:05
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