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アカコの備忘録。


by sarutasensei
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堪能。

堪能。_f0091834_1245376.jpg●渡辺公三『司法的同一性の誕生-市民社会における個体識別と登録』(言叢社)

※いや~、おもしろかった。すっごく堪能しました。これだけ楽しませてもらって¥3800とは、絶対にお買い得。

 アイデンティティ(中国語では「認同」)って、植民地期の台湾文学研究で、しょっちゅう出てくるキーワードなんだよね。例えば「内地人」に憧れる「本島人」とか。内台「混血」児を題材にした作品分析なんかでは、ちょいちょい見かける。アカコも身に覚えがないわけじゃあないけれど。

 だけど、「司法的同一性」っていう、まったく別の切り口があるんだなあ。警察をはじめとする国家機関から、「お前は○○という人物である」、って名指されてしまうような事態。
 「誰か」「何者か」という問いを一般化してアイデンティティすなわち「同一性」への問いと呼べるとすれば、こうした「同一性」への問いとしての人類学はどのように形成されたのか。文化を根拠として同一性を問う以前に、まず生物としての人間の同一性を問う人類学が成立したのではないか。(p.Ⅱ)
 
 特に、第4章の「近代システムへの〈インドからの道〉」が、アカコにとっては、超有益。
 19世紀の半ばに、イギリスの植民地インドで、指紋を用いたインド人登録が「発明」され、それが南アフリカへと「輸出」されていく。
 こうしてベンガルにおいて、イギリスの「文明」がおそらくインドの「半文明・半野蛮」の伝統に触発されて開発した指紋という近代システムの根幹となる装置は、イギリス本国を経て全「文明」圏へ、そして南アフリカを経由して全植民地圏へと浸透してゆくことになる。(p.141) 
 
 われらがダイニッポン帝国が(その正当なる後継者である「戦後民主主義」国ニッポンもまた)、大英帝国経由の人間管理の技術をフル活用したことは、言うまでもない。
by sarutasensei | 2007-08-13 17:38 | 読んだ本