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アカコの備忘録。


by sarutasensei
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ようやく。

ようやく。_f0091834_169634.jpg●小森陽一『レイシズム』(岩波書店)

※ひさしぶりに一冊の本を読了。でもアルベール・メンミやファノンのことにもっと触れるのかと思った。とりわけ「言語と差別」の章の、「口愛期」と「肛門期」の部分は冗長。
 第3章の永井荷風「悪寒」論も、なんかなあ。日露戦争後の1909年に発表され、『ふらんす物語』に収録されながら、長い間発禁となっていたこの小説は、インド人や中国人へのオリエンタリズム言説に乗っかっているように見せながら、実は大日本帝国へ向かうものへと反転させたものだという。
 でもさ、荷風の嫌悪感が、大日本帝国に向けられたものだとしても(アカコもそう思う)、そのために動員される西欧からの視線自体は疑われることのない前提とされているし、小森もその点に関して何も言及していない。で、いいの?
 この本で一番おもしろいと思ったのは、「書く人間」(オリンタリスト)と「書かれる人間」(オリエンタル)の関係性を論じながら、「読者」の問題を提起した箇所(p.66)。「書く人間」の表象する「力」は、「共犯者」としての「読者」が想定されていることに由来するのだ、という指摘。
 最近、アカコの「業界」では、植民地の読者論が流行っているけれど、こういう切り口はおもしろいな。
by sarutasensei | 2006-10-08 16:40 | 読んだ本