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アカコの備忘録。


by sarutasensei
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語ることの出来ない限界。

 朝から大雨。レインポンチョをかぶって登校。濡れないのはいいけれど、けっこうムシムシする。
 海南島論文のため、「日本の古本屋」経由で注文した古書が3冊届く。資料集めは続けるけれども、論文は今日から書き始めた。

●陸軍省情報部『改訂版 輝く帰還兵のために』
●木村毅編『支那紀行』(第一書房)
●火野葦平『百日紅』(新聲閣)

語ることの出来ない限界。_f0091834_20481537.jpg 陸軍省情報部のパンフを読むと、中国戦線からの帰還兵が故郷で何をしゃべるのかということに、軍がどれだけ神経を尖らせていたのかが分かる。そりゃそうだろうなあ。
 諸士は戦場に於て銃後の熱誠な後援といふものが如何に力強く有り難いものであるかといふことを痛切に感じたことであらう。之を思つたならば、銃後の人々に対してはその知らんと欲する戦地の状況や、戦友の勇戦ぶり、或は自らの尊き体験等を細大となく懇切に聞かすべきは当然であるが、それには苟も銃後の後援を弛緩せしめたり或は萎微せしめるやうな言動を充分に慎まねばならぬ。
 殊に帰還早々で気分が昂り、歓迎や歓待を受ける場合などになると不知不識の間に謙譲のたしなみを忘れて自己の功績を得々とし語り、或は戦況特にその労苦や惨烈の状況等を誇大に吹聴して、国民の戦争に対する恐怖心を深からしめたり、或は戦友や上官を誹謗して皇軍の名誉を傷けたり、或は軍に対して誤解を抱かしめたり、支那側の逆宣伝の材料として利用せられたり、又時とすると軍事上の機密を漏洩する等の過失を犯すやうなことがないとも限らないのである。(中略)
 諸士が戦場で他から聞いたことは、実際に見たことゝは自ら区別して考へたり話たりしなければならず、又話して差支あるかないかといふことに就ては控目にするか、或は先輩に質して見る等の注意が必要である。(中略)
 縦令事実を事実として語る場合に於てもそれが銃後の国民や対外関係に及ぼす影響等を考へたならば、そこには語ることの出来ない限界といふものもあり得るのである。(pp.26-29)

by sarutasensei | 2010-09-08 20:38 | 買った本