もうなんの借りもありません。
2009年 06月 04日
●渡辺清『砕かれた神-ある復員兵の手記』(岩波現代文庫)
福間良明の『「戦争体験」の戦後史』がおもしろかったので。
1944年、著者の乗っていた戦艦武蔵が沈没。2300人を超える乗組員の半数が戦死したという。
『砕かれた神』は、復員後の渡辺が綴った1945年9月から46年4月までの日記。戦争責任を回避した天皇を激烈に批判しつつ、「欺された」自分自身の責任が、ぎりぎりの深みで考察されている。
日記の最後は、渡辺が天皇に宛てた次のような手紙で結ばれている。
福間良明の『「戦争体験」の戦後史』がおもしろかったので。
1944年、著者の乗っていた戦艦武蔵が沈没。2300人を超える乗組員の半数が戦死したという。
『砕かれた神』は、復員後の渡辺が綴った1945年9月から46年4月までの日記。戦争責任を回避した天皇を激烈に批判しつつ、「欺された」自分自身の責任が、ぎりぎりの深みで考察されている。
日記の最後は、渡辺が天皇に宛てた次のような手紙で結ばれている。
私の海軍生活は四年三ヶ月と二十九日ですが、そのあいだ私は軍人勅諭の精神を体し、忠実に兵士の本分を全うしてきました。戦場でもアナタのために一心に戦ってきたつもりです。それだけに降伏後のアナタには絶望しました。アナタの何もかもが信じられなくなりました。そこでアナタの兵士だったこれまでのつながりを経ちきるために、服役中アナタから受けた金品をお返ししたいと思います。(中略)
たとえ相手が誰であっても、他人からの贈りものを金で見積もる失礼は重々承知のうえで、これについてはあえて一〇〇円を計算にくわえました。
以上が私がアナタの海軍に服役中、アナタから受けた金品のすべてです。総額四、二八一円五〇銭になりますので、端数を切りあげて四、二八二円をここにお返しいたします。お受け取りください。
私は、これでアナタにはもう何の借りもありません。(pp.329-336)
by sarutasensei
| 2009-06-04 21:21
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